素敵なひととき

本屋情報を活用しよう

5OOO社を担当していたのでは各社を困りきれなかったからである。 担当企業数を半分にすることでコール数は増える。
そうやって大口の顧客をつかまえることに集中するのである。 また、テレホン部門は、真ん中の75OO社を担当し、そこに電話をかけることにした。
なぜなら、4万5OOO社担当では、一度は電話をしてもフォローするところまで手が回らないからである。 しかも、下位の企業の年間売り上げはほんのわずかであり、電話をしていたのではもとがとれないことがわかったからである。
では、下位の4万社をどうするのか。 これらの4万社に関しては、マスメディアや広告を利用し、顧客から電話していただくことにして、こちらからは電話もかけないし、訪問もしない。
こういった分担にすると、顧客との関係づくりにかける時間を増やせ、収益性も向上できる。 また、個人の判断ではなく、組織での分担を変更することで、組織としての機能を徹底させることができるのである。
ここで考えてもらいたいのは、こういった分析と組織的な分担の変更を行わないままに情報装備を進めるとどうなるかだ。 直販部門では情報システムを導入し、一人当たりの生産性を上げないと5OOO社をカバーできないと考え、SFAの導入を図るかもしれない。

だが、もともと5000社という数に問題があるわけだから、お金をつぎ込んでも生産性は上がらず、疲弊感が残るだけだ。 テレホン部門は、4万5OOO社をカバーするために最新のコールセンター技術を入れ、秒単位で顧客への電話を管理しようとしたかもしれない。
ところが、もともとが収益に結びつかない小口の顧客であるため、投資をすれば損失が大きくなる。 しかも、秒単位のおざなりなコールでは、かえって悪い印象を残す可能性もある。
以上は、問題が複合的な要因によってもたらされるため、ITの導入だけではうまく解決しない実例のひとつである。 ここにITコンサルティングのマインドとスキルが活躍する場がある。
ひと口にCRMと言っても、物事には順序があり、企業が置かれた状況によって行うべきことは異なる。 それを示したものが図制である。
カスタマー・リレーションは、クライアントが大きな組織であれば、各営業マンやお客さま相談室、あるいは支店など、組織のあちこちで分散的かつ単発的にとられているはずだ。 それをコールセンターやインターネット・テレフォン・センターといった組織に集中させて、顧客への対応を標準化する段階がある。
その上で、初めて同じ品質で外に働きかける能動化が可能になる。 その後、クロスセル(他商品の販売)、アップセル(上級品の販売)などの役割と機能を複合化する段階になり、最終的には、マーケティング・プロセスだけでなく、ビジネス・プロセス自体を変えていく段階に達する。

重要なことは、ITコンサルティングのマインドとスキルをもって、客観的にクライアント(あるいは自社)はどのステージにいて、実現をめざすべきCRMは今どの段階かを見極めることである。 そして、実現するための課題(情報システムだけでなく、顧客戦略、組織、人の行動など)を含め、何に手を打たないとめざすところにいけないのかを考えなければならない。
マス・メディアに登場する成功例やソリューション適用後の姿は、この発展段階で言うと五や六の非常に高いところに置いてあるものだ。 今、一の段階にいる企業が、ITを入れるだけでひと足飛びに五や六になれるかと言えば、常識的に考えて困難なことは明らかだ。
そこにいたるまでの課題をブレイクダウンし、一個一個つぶしていくためのロードマップを描き、仕組みづくりをしていくところまでが、ITコンサルティングの範時と考えるべきである。 CRMで指摘したように、ビジネスにおいてはコスティングが大事である。
そこで、顧客一人当たりの収益管理など、新しい原価管理の仕組みを導入するときの留意点に話を進めたい。 今後のITの発達と普及を考えれば、顧客一人ひとりとコミュニケーションするのは当然のことになる。
一方、顧客のニーズを満たすべく、世界各国からソーシング(調達)して届けることもできる。 そのため、顧客の重要性が従来よりも増す。
なぜなら、顧客をしっかりとつかまえれば、商品やサービスを集めて提供することで、収益を増大させることが可能となるからである。 そうなると発想が逆転する。
従来は、商品やサービスを売ることが経営だった。 したがって、たとえば昨年はこの商品が一億円売れた、今年はこの商品を一O%多く売るためには何をすべきか、ということを一生懸命考えていた。
そのために何をするかが、経営戦略や販売戦略と言われるものだったわけだ。 ところが、顧客一人ひとりがわかるようになると、「このお客さまにあと1O%多く買ってもらうためには、どのようなものを提案すればよいだろう」、あるいは「どういうサービスを提供すればよいだろう」といった具合に、顧客一人当たりの収益を考えるようになる。
これを式で表すと、次のようになる。 これがたとえば昨年、Aさんからいただいた利益になるわけだ。
そこで、収益サイドとコストサイドの順で算出方法を説明していきたい。 まずは、相対的に算出が簡単な売り上げサイドの話をしよう。
売り上げが計上されるためには契約が存在する。 たとえそれがないとしても、少なくとも売上記録が残っているはずであり、Aさんに売れた金額がトータルでいくらかを計算するのは単純な足し算である。

ところが、多くの企業では事業別や製品別に誰にどれだけ売れたかがわかるように、情報システムを構築してきた。 そのため、各々の情報システムが個別に顧客データベースをもっている形が普通である。
たとえば金融商品で言うと、クレジット・カードを契約している顧客のデータベース、消費者ローンを契約している顧客のデータベース、それから自動車ローンを契約した人のデータベースというふうに、三つに分かれていたりする。 そうなると、Aさんからの収入を瞬時に計算することはできない。
個別の情報システムから出る数字を合算しなければならないのである。 さて、問題は、各々のデータベースに登録されているAさん(たとえば松下芳生でもよいが)が同一人物であるかどうかは、名前で検索しただけではわからないのである。
同姓同名もありうるし、入力ミスで松下良男となっているかもしれない。 同一人物を合わせることを「名寄せ」と言うが、これをするのに苦労する。
同一人物かどうかは最終的には本人に聞いてみるしか方法がない。 だが、いちいち顧客に電話をかけて確かめるのでは、大変なお金がかかる。
しかし、顧客データベースをきれいにしないと、一人当たりの売り上げを算出することはできない。 対象が個人であれば、名前と住所と電話番号、それに口座番号で特定して、名寄せできる確率が高い。

ところが、これが法人だとそうはいかない。 たとえば同じ○○生命という会社でどれだけの取引があるかを合算したいと思っても、A事業での顧客登録は○○生命総務部となっていて、それで顧客コードをもっている。
また、B事業では○○生命東京支部営業課で顧客コードをもっていて、○○生命というくくりで一度に合算できる状態ではない。

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